元教官からのアドバイス
「特別編③ 試験場での対応法」

21世紀幹部昇任試験研究会 特別寄稿

今回は,いよいよ「試験本番での答案の書き方」について述べる。



答案の書き方

制限時間の中で満足のいく答案を書くには,すぐに解答を書き始めてはならない。なんとかの「ダボハゼ」になるのではなく,出題の内容をよく吟味して,何を解答に求めているかを見出すことからが始まりである。次の要領で答案を書くようにするとよい。


① まず解答項目をメモしろ(魚の骨を書け)

まず,答案用紙の一枚を使い,それをメモ用紙として活用することである。そして,最初の5分間をメモの時間に充てることだ。そのメモ用紙に特別編@で述べた魚の形をした解答の骨格を書いて完成させるように試みる。出題が鯛の解答を求めているのであれば,それが鯛の形をしているように要点をメモし,また解答が秋刀魚を求めているのなら,秋刀魚の形になっているようにメモを作成していくことである。かける時間は5分間でそれ以上は時間をかけないようにし,その形になっているかどうかを確認し,要点が不足していれば書き足して形を整えるようにして,採点者がその形を判定できるようにしていくことである。

仮に,この骨格の中で背骨を除いて途中の骨が2〜3本思い出せなかったとしても,それを思い出すことに5分間以上に時間をかけないで次の肉付けに取りかかることである。時間との戦いであるし,前に進めている中で思い出すことが往々にしてあるからである。


② 魚の骨に肉付けをしろ

骨組みがメモできたら,そのメモに従って答案を作成していく。その骨子に肉付けをしていくのであるが,鯛は鯛らしく薄いピンク色になる規定とか判例などを書き加えて,細部にわたりそれにふさわしい特徴を付けていくようにし,また,秋刀魚は秋刀魚らしく青みがかった肉付けをして,その特色を表すようにして,採点試験官がもっともな色を付けていると判断してもらえるような肉付けをするようにしていくことである。しかし,完璧な肉付けができればそれに越したことはないが,完璧さを求めるあまりに,その肉付けが時間内にできないとなると形が作れずバランスを欠いた解答になり高得点は得られなくなる。

要するに,その魚が,形崩れを起こさないでバランス良くまとまっていることが最重点である。頭がなかったり,尻尾がなかったりすると,採点者が判断できないことがあるので,そうなると高得点は望めなくなるといえよう。あくまでも,全体的にまとまったもので,出題の目的に沿った形に肉付けしていくことである。


③ 時間を計算しろ

まず,試験の解答にあたり,1問に何分かけてよいかを割り振ってから答案を書き始めてほしいものである。この配分をしないで,知っていることをどんどん書いてしまうと,えてして頭でっかちになりがちで,結果,時間が足りなくて後の方は尻すぼみになって,せっかくの記憶した知識をうまく配分した答案が書けなくなってしまうものである。

そして,全体を書く時間のバランスが悪いと決して模範的な答案は書けないものである。問題の解答として,バランスの良い形をしていると,内容が少々劣っていても,採点者は高得点を出すことがあるが,バランスが悪いと非常に印象が良くないので,良い点数は望めないといえよう。そのようになっては合格できる実力があるのに,この注意を怠ったために不合格になってしまうおそれが出てくる。それではせっかく試験勉強で努力してきた甲斐がないので,全体の頁数にバランスよく答案の内容を割り振ることが必要である。

(「元教官からのアドバイス」『月刊警察』2010年6月号掲載の記事に加筆。)