1 高度に進んだシステムの問題 私たちは,大震災というと,被災地への「気持ち」と,一方において「復興」という両面を考えます。被災地の人々の思いというものを考え,それが一時的な「大自粛」にもなってしまいました。被災地の復興は,なかなか進まない状況もあるようですが,日本全体の元気が出ていなければ,復興のスピードも出ないとされています。そうした復興への弾みをつけるためには,過度な大自粛は日本経済全体が沈み込んでしまうとも言われ,日本全体を元気にするという意味で自粛ムードは少なくなっているようです。
日本は,高度に進化した社会経済システムをとっている国ですが,今回の大震災では SCM (サプライチェーン・マネジメント)といったシステムも機能不全に陥り,今後,どのような方法が良いのかの検証が行われるものと思います。サプライチェーン・マネジメントとは,部品メーカー,組立メーカー,配送業者などの供給に関係する企業が,情報を共有することにより,協力して顧客満足を実現するために,納期の短縮と流通在庫の削減を同時に実現する経営手法とされています。
小売業では,「店舗在庫を減らすこと」が利益向上に直結するという面と,顧客ニーズに応えるため,「商品の品切れをさせないようにすること」という相反する要求を解決しなければなりません。
例えば,コンビニエンス・ストアでは, POSシステムなどという方法がとられ,そのストアでの売れ筋の把握とともに,在庫を少なくしつつ,品切れをさせないよう,小口の物流を頻繁に行うということが行われています。また,メーカーでは,「今後の見込み生産量に見合うような在庫」を持つことはコストがかかるため,「受注してから生産する」という方式となり,ここにもシステムが機能していました。また,自動車や家電の製造では,東北地方に部品工場が多数存在しており,東北工場が被害を受けたことで,結果として,被災していない地域における組立製造工場が休業せざるを得ないような状況になったのです。
このような中,自動車会社ホンダの第4四半期決算が発表されました。ホンダは業績が好調ですが,東日本大震災の影響で,工場や研究所,連結子会社の建物などが損傷したほか,国内生産の操業停止,棚卸資産の減失などの被害で,約475億円の特別損失を計上しています。そのほか,発電機や小型の耕うん機なども製造しています。
また,厚生労働省が5月2日に発表した3月の毎月勤労統計調査(速報 従業員5人以上)によると,従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.4%減少の27万4,886円と13か月ぶりに減少したとしています。東日本大震災や計画停電の影響を受け,製造業や卸売業,小売業など各業種で軒並み労働時間が減少したことが響いたとされ,所定外労働時間は2.0%減少の10.1時間と15か月ぶりに減少したそうです。うち製造業は0.8%減の13.9時間と16か月ぶりに減少に転じ,工場の被災やサプライチェーンの寸断,計画停電などで生産活動が低下したことが響き,所定内労働時間は1.5%減の135.3時間と3か月連続の減少,基本給などの所定内給与は0.9%減の24万3,425円と3か月連続の減少だったそうです。
ただし,厚労省は震災の発生を受け,岩手・宮城・福島の3県について規模5 ~ 29人の事業所への調査員による訪問調査を取りやめたとしているので,実態としては, もっと下がっているものという考察もあるようです。2 震災復興の第1次補正予算案,衆院本会議で可決 5月2日,東日本大震災の復旧・復興費4兆153億円を盛り込んだ2011年度第1次補正予算案が成立しました。がれき処理など緊急の復旧策が中心となっているため早期成立を目指して大型連休中に異例の国会審議を行ったといいます。さらに,政府は本格的な復興策を盛り込んだ2次補正予算案の編成に取り組むことになっているといいます。
1次補正の内容は,復旧対策費と仮設住宅整備に3,626億円,がれき処理に3,519億円を計上し,道路,港湾,農地の修復などの公共事業費に1兆2,019億円と,阪神・淡路大震災後の補正予算の4倍の規模となりました。この予算には,基礎年金の国庫負担2分の1を維持するための2兆4,897億円を復興財源に転用したほかに,予備費,子ども手当減額などで財源を捻出し,新規国債の発行は見送られています。
また,東日本大震災の被災者や自治体を支援する特別財政援助法,地方交付税特例法など関連5法も2日の参院本会議で成立しています。特別財政援助法では,上水道や一般ごみ処理施設など7事業について国が復旧費総額の最大90%を補助することとしました。地方交付税特例法は,被災自治体に配分する特別交付税を1,200億円増額し, 23年度の地方交付税は総額17兆4,934億円となるそうです。
これらの中には,警察の国費分担なども含まれているのですが,通常は50%補助であるものも,被災地では補助率が高まっているのではないでしょうか。詳しくは,次回,取り上げることにしたいと考えています。3 災害対策基本法に戻って⑴ 緊急災害対策本部の設置(28条の2第1項)
災害対策基本法第28条の2第1項では,「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において,当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは,内閣総理大臣は,内閣府設置法第40条第2項の規定にかかわらず,閣議にかけて,臨時に内閣府に緊急災害対策本部を設置することができる。」とされています。
ア 内開府設置法第40条第2項
第3章第3節第5款は,「特別の機関」の設置に関する規定です。
「第18条,第37条,前条及び前項に定めるもののほか,本府には,特に必要がある場合においては,第4条第3項に規定する所掌事務の範囲内で,法律の定めるところにより,特別の機関を置くことができる。」とされています。
この範囲を超えて,緊急災害対策本部を設置することができるということです。
イ 内閣府設置法第18条
同第2款で規定され,「重要政策に関する会議」として設置が認められているものです。
第1項では,「本府に,内閣の重要政策に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に資するため,内閣総理大臣又は内閣官房長官をその長とし,関係大臣及び学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための機関(以下「重要政策に関する会議」という。)として,次の機関を置く。」とし,「経済財政諮問会議」,「総合科学技術会議」を設置しています。
第2項では,「前項に定めるもののほか,別に法律の定めるところにより内閣府に置かれる重要政策に関する会議で本府に置かれるものは,次の表の上欄に掲げるものとし,それぞれ同表の下欄に掲げる法律(これらに基づく命令を含む。)の定めるところによる。」として,災害対策基本法に基づく「中央防災会議」,男女共同参画社会基本法に基づく「男女共同参画会議」が設置されています。これ以外にも,設置できるということです。
ウ 内閣府設置法第37条
同第3款の「審議会等」の審議会に関する設置規定です。
第1項では,「本府には,第4条第3項に規定する所掌事務の範囲内で,法律又は政令の定めるところにより,重要事項に関する調査審議,不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関(次項において「審議会等」という。)を置くことができる。」とされています。
第2項では,「別に法律の定めるところにより内閣府に置かれる審議会等で本府に置かれるものは,次の表の上欄に掲げるものとし,それぞれ同表の下欄に掲げる法律(これらに基づく命令を含む。)の定めるところによる。」として,表中には,「原子力委員会」, 「原子力安全委員会」(原子力基本法及び原子力委員会及び原子力安全委員会設置法)が設置されることとしています。また,そのほかに,「国会等移転審議会」,「情報公開・個人情報保護審査会」,「再就職等監視委員会」というものの設置についても規定されています。
エ 内閣府設置法第39条,第40条第1項,第4条第3項
同第4款として,第39条では,施設等機関を置くことができるとされています。
第40条第1項は,「北方対策本部及び金融危機対応会議を置く。」とされています。
第4条第3項では,「前2項に定めるもののほか,内閣府は,前条第2項の任務を達成するため,次に掲げる事務をつかさどる。」とされています。
そして,第7号の2 「防災に関する施策の推進に関すること。」,第8号「防災に関する組織(災害対策基本法第2章に規定するものをいう。)の設置及び運営並びに防災計画(同法第2条第7号に規定するものをいう。)に関すること。」,第9号「激甚災害(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第2条第1項に規定するものをいう。)及び当該激甚災害に対し適用すべき措置の指定に関すること。」,第10号「特定非常災害(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項に規定するものをいう。)及び当該特定非常災害に対し適用すべき措置の指定に関すること。」,第11号「被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法第3条第1項に規定するものをいう。)の支給に関すること。」,第12号「台風常襲地帯(台風常襲地帯における災害の防除に関する特別措置法)第3条第1項に規定するものをいう。)及び災害防除事業(同法第2条第1項に規定するものをいう。)の指定に関すること。」,第13号「避難施設緊急整備地域(活動火山対策特別措置法第2条第1項に規定するものをいう。)及び降灰防除地域(同法第12条第1項に規定するものをいう。)の指定に関すること。」,第14号では,「大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策に関すること。」,第14号の2では,「原子力災害対策特別措置法第15条第2項に規定する原子力緊急事態宣言,同条第3項に規定する緊急事態応急対策に関する事項の指示及び同条第4項に規定する原子力緊急事態解除宣言を行うこと並びに同法第16条第1項に規定する原子力災害対策本部の設置及び運営に関すること。」,第14号の3では,「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく地震防災対策に関すること。」,第14号の4では,「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく地震防災対策に関すること。」,第15号では,「第7号の2から前号までに掲げるもののほか,防災に関する施策に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。」,第47号では,「原子力の研究,開発及び利用に関する関係行政機関の事務の調整に関すること。」,第59号では,「警察法第5条第2項及び第3項に規定する事務」が,それぞれ掲げられています。
⑵ 準用(28条の2第2項),事務の承継(同条第3頁)
「第24条第2項の規定は,緊急災害対策本部について準用する。」とされており,第3項では,「第1項の規定により緊急災害対策本部が設置された場合において,当該災害に係る非常災害対策本部が既に設置されているときは,当該非常災害対策本部は廃止されるものとし,緊急災害対策本部が当該非常災害対策本部の所掌事務を承継するものとする。」とされています。
⑶ 緊急災害対策本部の組織(28条の3)
法第28条の3に規定されています。
ア 第1項
「緊急災害対策本部の長は,緊急災害対策本部長とし,内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは,そのあらかじめ指名する国務大臣)をもつて充てる。」とされています。
イ 第2項
「緊急災害対策本部長は,緊急災害対策本部の事務を総括し,所部の職員を指揮監督する。」とされています。
ウ 第3項
「緊急災害対策本部に,緊急災害対策副本部長,緊急災害対策本部員その他の職員を置く。」とされています。
エ 第4項
「緊急災害対策副本部長は,国務大臣をもつて充てる。」とされています。
オ 第5項
「緊急災害対策副本部長は,緊急災害対策本部長を助け,緊急災害対策本部長に事故があるときは,その職務を代理する。緊急災害対策副本部長が二人以上置かれている場合にあつては,あらかじめ緊急災害対策本部長が定めた順序で,その職務を代理する。」とされています。
カ 第6項
「緊急災害対策本部員は,次に掲げる者をもつて充てる。」とし,第1号で,「緊急災害対策本部長及び緊急災害対策副本部長以外のすべての国務大臣」,第2号で,「内閣危機管理監」,第3号で「副大臣又は国務大臣以外の指定行政機関の長のうちから,内閣総理大臣が任命する者」とされています。
キ 第7項
「緊急災害対策副本部長及び緊急災害対策本部員以外の緊急災害対策本部の職員は,内閣官房若しくは指定行政機関の職員又は指定地方行政機関の長若しくはその職員のうちから,内閣総理大臣が任命する。」とされています。
ク 第8項
「緊急災害対策本部に,当該緊急災害対策本部の所管区域にあつて当該緊急災害対策本部長の定めるところにより当該緊急災害対策本部の事務の一部を行う組織として,閣議にかけて,緊急災害現地対策本部を置くことができる。」とされています。
ケ 第9項
「第25条第6項後段,第7項及び第8項の規定は,緊急災害現地対策本部について準用する。」とされています。
コ 第10項
「緊急災害現地対策本部に,緊急災害現地対策本部長及び緊急災害現地対策本部員その他の職員を置く。」とされています。
サ 第11項
「緊急災害現地対策本部長は,緊急災害対策本部長の命を受け,緊急災害現地対策本部の事務を掌理する。」とされています。
シ 第12項
「緊急災害現地対策本部長及び緊急災害現地対策本部員その他の職員は,緊急災害対策副本部長,緊急災害対策本部員その他の職員のうちから,緊急災害対策本部長が指名する者をもつて充てる。」とされています。
⑷ 緊急災害対策本部の所掌事務(28条の4)
法第28条の4により, 「緊急災害対策本部は,次に掲げる事務をつかさどる。」と規定され,次のように掲げられています。
ア 第1号
「所管区域において指定行政機関の長,指定地方行政機関の長,地方公共団体の長その他の執行機関,指定公共機関及び指定地方公共機関が防災計画に基づいて実施する災害応急対策の総合調整に関すること。」とされています。
イ 第2号
「非常災害に際し作成される緊急措置に関する計画の実施に関すること。」とされています。
ウ 第3号
「第28条の6の規定により緊急災害対策本部長の権限に属する事務」とされています。
エ 第4号
「前3号に掲げるもののほか,法令の規定によりその権限に属する事務」とされています。
⑸ 指定行政機関の長の権限の委任(28条の5)
前回,「指定行政機関の長」について解説しましたが,その長の権限の委任については,法第28条の5に規定されています。
第1項では,「指定行政機関の長は,緊急災害対策本部が設置されたときは,災害応急対策に必要な権限の全部又は一部を当該緊急災害対策本部の職員である当該指定行政機関の職員又は当該指定地方行政機関の長若しくはその職員に委任することができる。」,第2項では,「指定行政機関の長は,前項の規定による委任をしたときは,直ちに,その旨を告示しなければならない。」とされており,緊急災害対策本部長に指揮の権限が移ることになります。
⑹ 緊急災害対策本部長の権限(28条の6)
法第28条の6に規定されています。
ア 第1項
「緊急災害対策本部長は,前条の規定により権限を委任された職員の当該緊急災害対策本部の所管区域における権限の行使について調整をすることができる。」とされています。
イ 第2項
「緊急災害対策本部長は,当該緊急災害対策本部の所管区域における災害応急対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは,その必要な限度において,関係指定行政機関の長及び関係指定地方行政機関の長並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員,地方公共団体の長その他の執行機関並びに指定公共機関及び指定地方公共機関に対し,必要な指示をすることができる。」とされています。
ウ 第3項
「緊急災害対策本部長は,前2項の規定による権限の全部又は一部を緊急災害対策副本部長に委任することができる。」とされています。
エ 第4項
「緊急災害対策本部長は,緊急災害現地対策本部が置かれたときは,第1項又は第2項の規定による権限(同項の規定による関係指定行政機関の長に対する指示を除く。)の一部を緊急災害現地対策本部長に委任することができる。」とされています。
オ 第5項
「緊急災害対策本部長は,前2項の規定による委任をしたときは,直ちに,その旨を告示しなければならない。」とされています。
⑺ 非常災害対策本部の事務の継承等
緊急災害対策本部については,前述のとおり法第28条の2により,内閣総理大臣が「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において,当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるとき」に閣議決定により内閣府に臨時に設置する機関であり,本部長は内閣総理大臣,副本部長は国務大臣,また,当該災害に対して既に非常災害対策本部が設置されている場合は非常災害対策本部は廃止され,緊急災害対策本部がその事務を継承するものとされています。
4 東日本大震災における適用(本部等の設置)
政府は平成23年3月11日14時46分頃,東北地方太平洋沖地震が発生したことから,菅直人内閣総理大臣が,同日14時50分に官邸対策室を官邸危機管理センターに設置し,同日15時14分には内閣総理大臣を本部長とする「平成23年東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部」を設置しましたが,これは設置の初の例になりました。
また,5月7日までに,東日本大震災対応の本部組織を「緊急災害対策本部」,「原子力災害対策本部」に限定し,復興基本法成立後は「復興対策本部」(仮称)の3本部を軸とした体制に整理する方針を決めたとされました。
本稿の執筆に当たって,法律がたくさんあることを確認しましたが,法に基づいて組織も多数出来ていました。この組織見直しは基本的に5月9日付で実施することとして. 3本部の本部長は菅直人首相が務めるということです。
従来の「被災者生活支援特別対策本部」と,福島第1原発事故被害の賠償策を検討する「経済被害対応本部」は「チーム」に格下げし,東京電力本店に設けた「福島原子力発電所事故対策統合本部」は「政府・東京電力統合対策室」になり,「電力需給緊急対策本部」は今夏の電力不足対策決定後に「検討会合」とするとしています。また,「復興対策本部」は,根拠法となる復興基本法案について,復興庁の設置も含めた修正案により成立する見通しとなりました。
5 災害時における職員の派遣等
災害対策基本法第2章第4節は,「災害時における職員の派遣」について規定しています。
⑴ 職員の派遣の要請(29条)法第29条に規定されています。
ア 第1項
「都道府県知事又は都道府県の委員会若しくは委員(以下「都道府県知事等」という。)は,災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは,政令で定めるところにより,指定行政機関の長,指定地方行政機関の長又は指定公共機関(独立行政法人通則法第2条第2項に規定する特定独立行政法人に限る。以下この節において同じ。)に対し当該指定行政機関,指定地方行政機関又は指定公共機関の職員の派遣を要請することができる。」とされています。
イ 第2項
「市町村長又は市町村の委員会若しくは委員(以下「市町村長等」という。)は,災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは,政令で定めるところにより,指定地方行政機関の長又は指定公共機関(その業務の内容その他の事情を勘案して市町村の地域に係る災害応急対策又は災害復旧に特に寄与するものとしてそれぞれ地域を限つて内閣総理大臣が指定するものに限る。次条において「特定公共機関」という。)に対し,当該指定地方行政機関又は指定公共機関の職員の派遣を要請することができる。」とされています。
ウ 第3項
「都道府県又は市町村の委員会又は委員は,前2項の規定により職員の派遣を要請しようとするときは,あらかじめ,当該都道府県の知事又は当該市町村の市町村長に協議しなければならない。」とされています。
エ 派遣の根拠
都道府県には,公安委員会や教育委員会というものがありますが,上述のとおり,災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは,政令で定めるところにより,指定行政機関の長,指定地方行政機関の長又は指定公共機関に対し,当該指定行政機関,指定地方行政機関又は指定公共機関の職員の派遣を要請することができるとされており,警察官の派遣についても,この根拠で派遣が可能となっているのです。
⑵ 職員の派遣のあっせん(30条)
法第30条に規定されています。
ア 第1項
「都道府県知事等又は市町村長等は,災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは,政令で定めるところにより,内閣総理大臣又は都道府県知事に対し,それぞれ,指定行政機関,指定地方行政機関若しくは指定公共機関又は指定地方行政機関若しくは特定公共機関の職員の派遣についてあつせんを求めることができる。」とされています。
イ 第2項
「都道府県知事等又は市町村長等は,災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは,政令で定めるところにより,内閣総理大臣又は都道府県知事に対し,地方自治法第252条の17の規定による職員の派遣についてあつせんを求めることができる。」とされています。
ウ 第3項
「前条第3項の規定は,前2項の規定によりあつせんを求めようとする場合について準用する。」とされています。
⑶ 職員の派遣義務(31条)法第31条に規定されています。
「指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長,都道府県知事等及び市町村長等並びに指定公共機関は,前2条の規定による要請又はあつせんがあつたときは,その所掌事務又は業務の遂行に著しい支障のない限り,適任と認める職員を派遣しなければならない。」とされています。
⑷ 派遣職員の身分取扱い(32条)
法第32条に規定されています。
第1項では, 「都道府県又は市町村は,前条又は他の法律の規定により災害応急対策又は災害復旧のため派遣された職員に対し,政令で定めるところにより,災害派遣手当を支給することができる。」,第2項では,「前項に規定するもののほか,前条の規定により指定行政機関,指定地方行政機関又は指定公共機関から派遣された職員の身分取扱いに関し必要な事項は,政令で定める。」とされています。
⑸ 派遣職員に関する資料の提出等(33条)
法第33条に規定されています。
「指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長,都道府県知事又は指定公共機関は,内閣総理大臣に対し,第31条の規定による職員の派遣が円滑に行われるよう,定期的に,災害応急対策又は災害復旧に必要な技術,知識又は経験を有する職員の職種別現員数及びこれらの者の技術,知識又は経験の程度を記載した資料を提出するとともに,当該資料を相互に交換しなければならない。」とされています。
いずれにしても,早期復興に向けて被災地の治安確保が基本であろうかと思います。全国警察を挙げて職員の派遣やその他の支援をするとともに,派遣先都道府県警察における治安確保を徹底していくことが肝要です。
全職員の皆さん,一体となって,頑張りましょう!